大判例

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大阪高等裁判所 昭和33年(う)548号 判決

先づ量刑不当の論旨に対する判断に先立ち、職権を以て案ずるに、記録によれば、原判決はその判示一において、被告人は朝鮮人で外国人登録証明書の交付を受けているものであるが、右登録証明書の有効期間満了日である昭和三十年一月二十六日前三十日内に居住地の京都市中京区役所において同区長に対し所定の手続により新たに登録証明書の交付を申請しなければならないのにその申請をなすことなく右期間を超えて本邦に在留しているものであると認定し、更に被告人は昭和三十二年五月四日京都簡易裁判所で道路交通取締法違反罪で罰金千円に処せられ同月二十四日該裁判は確定したものであると判示し、前記外国人登録法違反罪は右道路交通取締法違反罪と刑法第四五条後段の併合罪の関係にあるものとして法令を適用している。しかし昭和三十一年法律第九六号(同年八月一日より施行)による改正前の外国人登録法(以下旧法と称する)第一一条第二項第一八条第一項第一号の違反罪にしても同改正後の外国人登録法(以下新法と称する)第一一条第一項、第一八条第一項第一号、同法附則第二項の違反罪にしても、いずれもいわゆる継続犯で、しかも右新旧両法の違反は同性質のものであるから、新たに登録証明書の交付を申請しないまま又は登録原票の記載が事実に合つているかどうかの確認申請をしないまま所定期間を超えて本邦に在留している限り仮令新旧両法の期間に跨つていても一箇の犯罪が継続しているのである。ところで継続犯の中間に他の犯罪による有罪の確定裁判が介在しても、それによつてその継続犯が中断されて別箇の二箇の継続犯が存在するものではなく、あくまでも一箇の継続犯のみが存在するものと解すべきである。さすればこの継続犯を以て他の中間確定裁判前に犯した罪として右確定裁判を経た罪と刑法第四五条後段の併合罪とみることは正当ではない。蓋し右継続犯のうち中間の確定裁判より前の分は同確定裁判と同時に裁判をし得たかも知れないが、現に継続し単純一罪をなす同裁判より後の分を切捨て無視するような不合理な結果になるからである。なお若し有罪の確定裁判の前後に継続犯が跨つていても、この継続犯は右確定裁判前の罪として確定裁判の罪と刑法第四五条後段の併合罪の関係にあるものとするならば、中間確定裁判後法が改正せられた場合にも右継続犯を確定裁判前の罪即ち旧法当時の罪とする関係上新法を適用することには無理があり、旧法を以て律すれば判例の示す「継続犯が新旧両法に跨るときは新法を適用すべきもの」とする法理と背馳することとなる。そればかりか、公訴時効の起算点をいずれにおくかについても解釈上の困難を生ずることになる。従つて継続犯の場合、仮令その中間に有罪の確定裁判が介在しても刑法第四五条後段の適用の問題が生ずる余地がないと解するのが相当である。さて本件外国人登録法違反行為について見るのに、犯罪の開始時は前記のとおり昭和三十年一月二十六日であるが、右違反行為は昭和三十三年三月七日本件起訴当時も更に同年三月二十七日の原判決言渡当時もなお引続き継続しているものとせられていること記録上明らかである。ところで前掲の道路交通取締法違反罪の裁判の確定日は前記のとおり昭和三十二年五月二十四日で、即ち右確定裁判は継続犯なる本件外国人登録法違反罪の中間に介在するわけである。それにも拘らず原判決が前記のとおり右道路交通取締法違反罪の確定裁判と本件外国人登録法違反罪とを刑法第四五条後段の関係にあるとしたのは法令の適用に誤りがあるといわざるを得ず、この誤りは原判示の詐欺罪との関係について原判決に影響があることは明らかである。従つてこの点において原判決は破棄を免れない。

(裁判長裁判官 山本武 裁判官 三木良雄 裁判官 坪倉一郎)

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